相続対策に生命保険を生かしたい
シニア層の間で相続対策に生かしたいというニーズが多い
日本生命保険商品開発部の担当者のお話によれば
契約時に一括して保険料を支払う「一時払い終身保険」について、シニア層の間で相続対策に生かしたい、というニーズが強まっています。
長期金利の上昇を受けて、2023年1月に予定利率を0.25%から0.6%に引き上げたところ販売が急増。2023年7月までの販売件数は約3万5000と前年の同時期の約10倍に達しました。
従来から相続に備える商品として注目されていましたが、予定利率引き上げで関心がさらに高まったというお話です。
生命保険が相続対策で有効な理由
生命保険は相続対策としてさまざまな目的に応じて使える
具体的には
相続税の負担を軽くする、
納税資金を確保する、
相続人同士が遺産の分け方を巡って対立する「争族」を解決する、
の3つです。
死亡保険には非課税枠(法定相続人の人数)×500万円があり、その分だけ相続税を少なくすることができます。また5営業日程度で現金で受け取れるため、税金の支払いや葬儀費用などに充てることも可能です。
さらに保険金は受取人固有の財産になりますから、遺産分割協議の対象外です。分割割合で公平でない場合に受取人がほかの相続人に代償金として支払えば、対立が深刻化することを回避できます。
生命保険の特徴と相続対策としてのメリット
特徴 |
メリット |
---|---|
非課税枠がある | 非課税枠の分だけ相続税を少なくできる |
現金ですみやかに支払われる | 納税資金、葬儀費用、当面の生活費用に活用できる |
遺産分割協議の対象外 | 被相続人が指定した相続人に財産を渡すことができる |
相続税対策では生前贈与をするのも有効
相続税対策では、子供や孫に生前贈与をするのも有効な手段です。その仕組みを利用するのが、「生前贈与機能付き保険」です。円や米ドル、豪ドルなど契約者が指定した通貨で運用し、年に一度保険資産から生存給付金を支払います。
子供らが受け取れば給付金が生前贈与になります。
贈与税は受贈者1人あたり年110万円までなら非課税ですから、給付金も110万円以下が多いです。三井住友海上プライマリー生命保険や第一フロンティア生命保険などが銀行や証券を通じて販売します。
利点は通常の生前贈与より手続きが簡単なことです。「贈与税の計算上は贈与があったとみなされる」ため、贈与契約書の作成も不要です。保険会社が一定額を支払うので、振り込む手間も省けます。
毎年決まった金額を同じ時期に贈与すると定期贈与とみなされて課税される可能性がありますが、給付金は契約者が生きていないと支払われず、受取人も変更可能なので定期贈与には該当しません。
外貨建てでは、為替の影響に目配りが必要です。円安が進むと給付金は円換算で非課税枠を超えることもあります。その場合は超えた分を翌年以降に繰り越すことが可能です。逆に円高が長期化すれば給付金が減るリスクもあります。
受取人を子供にすると契約期間中などに親が亡くなった場合、相続開始前3年以内に受け取った給付金は相続財産に加算されます。2024年以降は段階的に7年間に延長されるので注意が必要です。早めの贈与が効果的なことに加えて、給付金の受取人を法定相続人ではない孫などにすれば、他に相続財産がなければ加算の対象外になります。
相続対策としてもう一つ知っておきたいのが、保険金の受け取り方をあらかじめ決める「生命保険信託」があります。死亡保険金を信託銀行が管理し、相続人である子供らに分割で渡します。活用が多いのは子供に障害があったり、配偶者が高齢だったりしてお金の管理に不安があるケースです。
月20万円など契約者が決めた金額、時期、頻度で支払うことで、多額のお金を一度に受け取って使いすぎることを防ぎます。注意点は手数料が必要であることです。
相続で使われる主な生命保険
名称・通称 |
特徴やメリット |
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一時払い終身保険 | ・保険料を一括で支払い、支払額を上回る保険金を得られる
・非課税枠の活用などに有効 |
生前贈与機能付き保険 | ・保険料を一括で支払い、指定した人に毎年一定額を給付する
・円、米ドルなど運用する通貨を選択する |
生命保険信託 | ・契約者が死亡保険金の使い道や渡し方を指定できる
・財産管理に不安がある家族がいる人の利用が多い |