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相続開始時の遺産の権利状態
相続開始時の遺産の権利状態
相続が開始すると、被相続人が生前に所有していた財産は相続人に承継されます。
相続人が1人の場合は、1人が全てを相続するので簡単ですが、複数の場合は、各相続人が相続財産に対してどのような状態で権利を取得するのかが問題になります。
例)
被相続人太郎の相続人は、妻花子と3人の子供A,B,Cです。
遺産は、@会社に賃貸している土地、A預貯金、B定額郵便貯金、C会社株式等の財産、D会社の金融機関に対する債務の個人保証
があります。
相続開始時の不動産の権利状態
相続開始時の不動産の権利状態
被相続人が所有していた不動産は、相続開始後は遺産分割協議によって、取得者が決まるまでは、相続人全員による各自の法定相続分の割合による共有状態となります。
共有状態ですから、相続した不動産の売却や、担保の提供には全員一致が必要となります。
また、共有不動産の管理に関する事項は、共有者の持分の過半数で決定することになります。共有不動産が賃貸されている場合には、賃貸借契約の解除や新規契約は、「管理に関する事項」に該当しますので、持分が過半数に満たない共有者が、単独で意思表示をしても効力が生じませんのでご注意下さい。
預貯金
相続開始時の不動産の権利状態
相続財産としての預貯金は、法律的には預貯金払い戻し請求権という債権です。
預貯金債権は、可分債権とされ、相続人が各自の法定相続分に従い当然に取得するものであるとされています。
例えば、被相続人太郎が3,000万円の預貯金を有していた場合、相続開始後の妻花子の法定相続分は2分の1ですから、1,500万円の預貯金債権を当然に取得することになります。
同様に3人の子供A,B,Cは、残りの1,500万円を各自3分の1の割合で相続しますので、各自500万円の預貯金債権を取得することになります。
このように、預貯金は、遺産分割手続きを経ることなく、「当然分割」とされているのです。
この扱いは法的には確立されたものですが、金融機関実務はこれとは異なっています。金融機関では、遺言があったとか遺産分割が完了していた等の後々の紛争を避けるため、印鑑証明を添付した相続人全員による払い戻し請求がなされない限り、一般的に引き出しに応じてくれないようです。
会社株式
会社株式
会社株式は、最高裁の判例では、相続人各自の相続分に応じた準共有状態となるものとされています(最高裁昭和45年1月22日判決)。
つまり、仮に被相続人太郎が会社株式を3,000株有していた場合、3,000株のすべての株式につき1株を共同所有することになります。
株式が、相続人全員の準共有状態となると、共有者は株主としての権利行使者1人を定めて会社に通知しなければなりません。この権利行使者を定めて通知をしない限り、共有者はその株式についての権利行使をすることができなくなります。
したがって、会社株式について何の対策もしていないと、相続人は相続人中の1人を権利行使者にすることを合意できなければ、株主としての権利行使ができなくなります。
被相続人太郎が会社の議決権の3分の2以上の株式を保有していた場合には、共有者である相続人株主がもめて、権利行使者を定めることができないと、会社の役員選任議案に必要な定足数すら満たすことができません。
その結果、会社は身動きが取れなくなり、太郎社長の生命保険を請求することもできない等、致命的な損害が会社に発生することもありえます。
個人保証債務
個人の保証債務
被相続人が第三者の金融機関債務等につき、個人保証をしていた場合ですが、債務は預貯金と同様に遺産分割の対象ではなく、相続人各自の相続分に応じて当然に分割されます。
連帯保証人については、相続税法上の債務とはなりません。
いざ保証しないといけなくなり、びっくりすることがないように相続に際しては特に確認しておくことが必要です。
借金の連帯保証人になるときは、その保証にかかる契約書のコピーを取るなど、自分自身のみならず家族にもその存在がわかるようにしておくことが必要です。
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