遺言書がある場合の手続き
Q.遺言書がある場合の手続きは?
遺言書がある場合、手続きはどのようにすればよいのでしょうか?また、遺言書が無効になってしまうことがあるのでしょうか?
A.遺言書の種類と遺言執行者により変わります
遺言書の種類や遺言書を執行する人(遺言執行者)の指定の有無で手続きが変わります。また、遺言書はその形式や内容によって無効となるものがあります。
遺言書がある場合の手続き
1.遺言書の検認の申し立て | 相続人等が遺言書を発見したり、遺言書を保管していた場合には、その相続人等は家庭裁判所に遺言書の検認を申し立てます。 |
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2.検認調書の作成 | 家庭裁判所は相続人や利害関係者(全員でなくて可)の立会いの下に遺言書の検認を行い、検認調書を作成します。 |
3.遺言執行者の選任 |
遺言書に遺言執行者の指定がされていた場合には、その人が承諾するか否かを確認します。
その人が拒否した場合や遺言書に遺言執行者の指定がされていなかった場合には、相続人は家庭裁判所に遺言執行者の選任をしてもらうように請求し、家庭裁判所は遺言執行者を選任します。 |
4.遺言の執行 |
遺言執行者は就任後、遺言の執行を開始します。
具体的な作業は、遺言効力の判断、財産目録の作成、不動産の移転登記、債権譲渡の手続き、相続人らへの財産の引渡しです。
相続人は遺言の執行を妨げるような行為はできません。 |
5.相続人へ通知 |
すべての遺言の執行が終了したら、遺言執行者はその旨を相続人へ通知して任務を終了します。
なお、遺言執行者には報酬が支払われます。 |
遺言書が複数あった場合
Q.遺言書が複数ある場合は?
遺言書が複数ある場合、その遺言が有効になるのでしょうか?
A.遺言書の作成日が新しいものが優先
複数の遺言書が発見されたときは、各遺言書の日付の新しいものが優先されます。
ここで、優先というのは、前に書かれた遺言の内容と後に書かれた遺言の内容に食い違う部分がある場合、前に書かれた遺言内容を後に書かれた遺言内容で撤回したものとみなされます。
その部分については、後に書かれた遺言の内容が有効になる、ということです(民法1023)。
そのため、最新の遺言のみ有効で、前に書かれた遺言は全て無効になる、ということではありません。
前に書かれた遺言でも、後に書かれた遺言で触れていない部分については有効となります。
遺言書の検認※開封してしまったら?
Q.遺言書を検認前に開封してしまったら?
遺言書を開封する前に検認が必要だと聞きました。どのような手続きとなるのでしょうか?また、検認をせずに遺言書を開封してしまった場合、遺言は無効となってしまうのでしょうか?
A.検認しなかった場合でも無効にはならない
検認の手続きは以下のとおりです(民法1004)。また、検認をしなかった場合でも遺言は無効にはなりませんが、5万円以下の過料に処せられます(民法1005)。
自宅等で遺言書を発見した場合、その遺言書が自筆証書遺言、秘密証書遺言の場合には、遺言書の検認の手続きが必要です。
また、封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人らの立会いの下でなければ開封することはできません。
検認というのは、一種の証拠保全手続きです。検認の日現在の遺言書の形状や内容を確認し、その後の偽造を防ぐために行われます。
公正証書遺言は、公証役場において確実に保管されていて偽造の危険もないことから、検認手続きが免除されています。
遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、家庭裁判所にその遺言書を提出して、遺言書の検認の申し立てをします。
家庭裁判所は、遺言書の内容、日付、署名、印章等についてを記録した検認調書を作成します。検認には相続人全員が立ち会う必要はありません。
なお、検認はあくまでも保全手続きですから、検認を受けたからといってその遺言が必ず有効ということではなく、逆に検認を受けていないからといって、その遺言が無効ということではありません。
遺言の有効性については、遺言書無効確認の訴などで争われます。
遺言書の作成にあたっては、公正証書遺言をおすすめしますが、その作成にあたっては、必ず専門家に相談されることをおすすめします。
自筆証書遺言とパソコンでの作成
自筆証書遺言、一部パソコンでの作成が認められる
相続制度が大きく変わる中、遺言書の使い勝手も良くなってきました。
本人が手書きをする自筆証書遺言について、一部はパソコンでの作成が認められました。2020年には法務局で保管してもらうことも可能になります。
相続に関する民法が2018年に改正され、2019年から順次施行されています。その一つが自筆証書遺言での制度変更です。
自筆証書遺言は従来、本文に加え、土地や建物、金融資産などの状況をまとめた財産目録も含め、全て手書きをする必要がありました。
銀行通帳や不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)のコピーで代用することもできませんでした。財産が多く、内容を見直したい場合などは、全部書き直さなければならず負担が大きくなります。
それが、2019年から、財産目録についてはパソコンやワープロで作成でき、通帳などのコピーでも代用できることになりました。ただ、偽造防止のため、全ての目録に署名と押印が必須となっています。
また、本文についてはこれまでと同様に手書きをしなければなりません。
法務局で保管開始
2020年7月10日からは、もう一つ大きな変更があります。
自筆証書遺言を最寄りの法務局で、有料で保管してくれる制度がスタートします。
自筆証書遺言は、紛失したり相続人に改ざんされたりする恐れがありました。保管制度が始まれば、そうした事態は避けられる期待があります。
また、保管制度には別のメリットもあります。自筆証書遺言には一定のルールがあり、署名や押印、作成年月日といった必要事項をきちんと記載しないと、後で無効となるリスクがありました。
保管制度を利用すれば、預かる際にこうした点が記載されているかどうかを法務局の事務官が確認するので、書式の不備の心配はなくなります。
自筆証書遺言は、遺言者の死後、保管先から持ち出して家庭裁判所に提出し、検認という手続きを経ないと開封できません。この検認も、法務局で保管する場合は不要となります。
使いやすくなった自筆証書遺言の注意点
使いやすくなった自筆証書遺言ですが、注意点もあります。
例えば、表現の仕方です。「相続させる」とすべきところを、「相続を強く希望する」と書いたため、遺言が実行されなかったケースもあります。明瞭な表現が求められます。
また、記載漏れした財産があると、トラブルの元となります。
このほか、遺留分(法が定める最低限の相続分)や相続税のことも考慮しなければならないため、完成前に一度、税理士の専門家にチェックしてもらうことをおすすめします。
遺産分割の理由や残された家族へのメッセージなどを伝えるため、遺言書に添える「付記事項」の活用もあります。
付記事項とは家族への手紙のようなものです。遺言の意図や感謝の気持ちが書いてあれば、家族の納得も得られやすく、無用な争いも避けることができます。
自筆証書遺言の変更点
改正前 | 改正後 | |
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作成方法 | 全文自筆 |
本文は自筆。 |
保管場所 | 自宅など | 法務局でも保管が可能 |
内容の確認 | 基本的に本人 | 保管制度利用により、法務局の事務官が署名、押印、作成年月日などをチェック |
家庭裁判所の検認 | 必要 | 保管制度利用すれば不要 |
紛失、改ざん | 恐れあり | 保管制度利用により、恐れなし |