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自宅、居住用不動産を配偶者に生前贈与
2000万円まで非課税
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で自宅の不動産を贈与する場合、2,000万円までは贈与税がかかりません。
これは通称、おしどり贈与と呼ばれ、2016年は1万1,261件の適用がありました。
自宅を生前贈与されても原則として相続分から差し引かれない改正民法が成立しております。配偶者の老後生活を保障する手段として改めて注目されています。
おしどり贈与は同じ配偶者に対して一生に1回だけ適用してもらえます。配偶者が今住んでいる自宅だけでなく、新たに自宅とする不動産を買うためのお金を贈与する場合も対象です。
贈与の翌年3月15日までに配偶者が実際に住むことが条件です。
贈与税はもらう人1人あたり年間110万円の非課税枠があります。おしどり贈与とあわせると、自宅の土地・建物も自宅取得資金も2,110万円までなら贈与税がかかりません。
ただし、所有権の登記にかかる登録免許税は相続に比べて税率が高く、不動産取得税もかかります。
日本人の平均寿命は男性が81歳、女性が87歳ですから、同じ年の夫婦であっても夫に先立たれた妻には約6年間の余生があります。夫が年上なら妻の余生はさらに長くなります。
おしどり贈与の多くは夫から長年連れ添った妻への感謝のしるしであると同時に、妻の老後の生活保障という意味合いがあります。
しかし、現行民法では相続人の間の公平のため、こうした生前贈与を「特別受益(とくべつじゅえき)」として扱い、その分だけ法定相続分を減らすという規定があります。
この計算は「持ち戻し」といいます。おしどり贈与の分が持ち戻しされると、妻の老後の生活保障という意味合いが薄れてしまいます。
例えば、2,000万円をおしどり贈与した夫が、妻と子供1人に4,000万円の預金を残して亡くなったとします。法定相続割合は妻と子供で2分の1ずつです。持ち戻し計算をすると取り分はそれぞれ3,000万円です。
すでに2,000万円を受け取っている妻は、預金のうち1,000万円しか相続できなくなります。
夫が遺言や生前の言動などで「持ち戻し免除」の意思表示をしていれば特別受益に含まれず、妻の相続分は減りません。ただ多くのケースでは意思表示が明文化されておらず、相続人の間でトラブルの種になるリスクがあります。
改正民法では、婚姻20年以上の夫婦間で贈与した居住用不動産について、持ち戻し免除の意思表示があったと推定することにしました。
一定条件を満たす自宅贈与を遺産分割と切り離して扱うことで、妻の生活保障を手厚くするためです。自宅取得資金については、この規定の対象外なので要注意です。
ただし、改正民法では持ち戻し免除が完全に保証されるわけではありません。相続トラブルを避けるためには、やはり遺言や手紙で持ち戻し免除の意思表示をしておくべきです。
生活費や教育費の贈与
扶養義務者間の贈与の活用と立証
直系血族からの教育資金の一括贈与(1,500万円)の非課税をきっかけにして、非課税である扶養義務者相互間における教育資金や生活費の贈与が、即効性のある相続税の節税になるとして注目を浴びています。
直系血族や配偶者・兄弟等からの教育費や生活費等の贈与であるならば、生計が別であっても多額であっても贈与税がかからないのですから、ベストな節税といえるためです。
生活費や教育費は非課税
扶養義務者とは配偶者ならびに直系血族および兄弟姉妹等をいいますが、この扶養義務に基づき扶養義務者が子供や孫の必要最低限の生活費または教育費を負担しても所得税はかかりません。
また、扶養義務者相互間における扶養義務の範囲を超えた生活費または教育費については、通常の社会常識の範囲で行われている限りは、贈与税は非課税と決められています。
したがって、直系血族である孫の大学の入学金や授業料、ピアノ等のお稽古事の月謝を直接支払ってもらっても、その他一家全員で使う食料品や消耗品の購入代金を直接支払ってもらっても、所得税も贈与税もかかりません。家族間での日常生活の応援は贈与対策のポイントとなります。
ただし、扶養義務は収入のない人への援助ですから、高収入の子供の口座に孫の教育費を振り込んでも、贈与税は非課税とはなりません。
教育費は子供が自分自身の子供の扶養義務として負担し、親が振り込んだお金は単に贈与とされるのです。必ず、授業料や家賃は直接支払うなど、収入のない家族への援助であることを立証する方法をお勧めします。
通常必要額だけが認められる
生活費も教育費も、通常必要とされるものに限る、というのがポイントです。
この場合の生活費とは、その人の社会的、経済的地位等から考えて、通常の日常生活を営むのに必要な費用をいい、治療費、養育費なども含まれます。
また、教育費とは、被扶養者の教育上、通常必要と認められる学資、教材費、文具費等をいいます。
これは、国内国外を問いませんし、教育費は義務教育費に限りません。たとえば、私学の医学部に入学したり、海外留学すれば、何千万円もの費用がかかることもありますが、これらは教育に直接必要なお金ということで課税上の問題はありません。
子供や孫にお金を直接渡すのではなく、将来立派な人材になり自立できるようになるためにお金を注ぎ込むのです。こうすれば遺産額も減って節税になりますから、本当の意味での税金のかからない心のこもった贈与といえます。
生活費や教育費で税金がかかる場合
必要な都度渡すのがポイント
生活費や教育費といった名目で贈与されたものであっても、必要な都度渡すということがもう一つのポイントです。
例えば、親が学費だ、といって一括して渡した現金のうち、子供が余りを自分名義の預貯金にするとか、車の購入代金に充てた場合や、生活費として渡された金額から妻が自分名義の株式を購入したり、不動産買入代金に充てたりするという場合は、通常必要なものとはいえません。
その部分については贈与税が課税されるか、相続時には被相続人の名義借財産として、相続税がかかることになります。
婚姻費用や出産費用の贈与
婚姻費用
子供が結婚するにあたり、親が新居の購入費用を出せば贈与税がかかります。
しかし、子供が親から、家具、寝具、家電製品等婚姻後の通常の日常生活を営むために必要な家具什器等の贈与を受けた場合、またはそれらの購入費用に充てるために金銭の贈与を受けその全額を家具什器等の購入費用に充てた場合等には、贈与税はかかりません。
ただし、贈与を受けた金銭が預貯金となっている場合、株式や車、家屋の購入資金に充てられた場合等のように、その生活費(家具什器等の購入費用)に充てられなかった部分については、贈与税の課税対象となります。
また、結婚式、披露宴の費用を誰(本人、その親)が負担するかは、その結婚式、披露宴の内容、招待客との関係、人数や地域の慣習などによってさまざまであると考えられます。
それらの事情に応じて、本来費用を負担すべき者それぞれが、その費用を分担している場合には、そもそも贈与に当たらないことから、贈与税の課税対象となりません。
出産費用
出産にあたって子供が親から検査、検診、分娩、入院に要する費用について贈与を受けた場合、これらについては治療費に準ずるものであることから、やはり贈与税はかかりません。
また、新生児のための寝具、産着等のベビー用品の購入費用に充てるための金銭の贈与を受けた場合、生まれてくる子供のためのベビー用品の購入費用に充てた部分についても、贈与税はかかりません。これらの費用の贈与は、親の温かい心を活かす最高の節税対策といえます。
その他の生活費の贈与
社会通念上適当と認められる範囲かどうか
扶養義務者相互間において生活費に充てるために贈与を受けた場合に、贈与税の課税対象とならない生活費については、課税当局はその者の通常の日常生活を営むのに必要な費用(教育費を除きます)としています。
また、通常の日常生活を営むのに必要な費用に該当するかどうかは、贈与を受けた者(被扶養者)の必要性と贈与をした者(扶養者)の資力その他一切の事情を勘案して、社会通念上適当と認められる範囲かどうかで判断されることとなります。
したがって、子供が自らの資力によっては、居住する賃貸住宅の家賃等を負担することができないなどの事情があれば、社会通念上適当と認められる範囲の家賃等を親が負担している場合であっても、贈与税の課税対象となりませんのでご安心ください。
贈与は成立する
親権者の意思表示で
贈与する人ともらう人の双方の意思が確認できない場合には、贈与は成立しません。
ただし、民法においては、行為者が未成年者である場合には親権者が代理として法律行為をすることができます。
したがって、意思表示のできない子供であっても、親が親権者となり、その代理として贈与契約を結び、物の引渡しを受けて預かっておけば贈与は成立することになります。
このようなケースでは、特にその証拠をしっかり残すことが大切です。たとえば、贈与契約書に子供の代わりに法定代理人として親権者が署名押印しておくとよいでしょう。何よりも法律要件を充足しておくことがポイントです。
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