保証債務 債務控除 相続対策 

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相続人による保証債務の履行と債務控除の対象

会社への貸付金は相続財産がイメージできる画像

 

前提条件

1.Xは、平成25年に、弟が経営しているM社が事業の拡張資金を金融機関から借り入れる際に保証人となりました。

 

2.Xは、昨年の5月に亡くなりました。Xには、配偶者や子供がいないので、Xの相続人は父と母の2人です。

 

3.M社は、多額の債務超過の状態にあり、業績の回復の見込みもないため、昨年7月に解散し、現在清算中の状況です。

 

4.Xの弟と、Xの父母、金融機関の3者の話し合いの結果、M社は、同社が金融機関に担保として提供している土地を売却し、その売却代金で金融機関からの借入金の一部を返済するとともに、残余の債務のうち3,000万円を超える部分は債務免除を受け、残額3,000万円は、今後1年以内に保証債務の履行としてXの相続人である父母が返済することになりました。

 

5.Xの遺産については、既に父母間で遺産分割が終了しており、相続人である父母が金融機関に返済することになった3,000万円のXの保証債務の全額を父が承継することになっています。

 

 

質問

1.父の相続税の課税価格を計算する場合、父が承継するXの保証債務3,000万円を債務控除の対象とすることができますか?

 

2.父が土地を譲渡して、その譲渡代金で3,000万円の保証債務を履行した場合、その土地の譲渡所得について所得税法64条の2項の資産を譲渡して保証債務を履行した場合の特例の適用を受けることはできますか?

 

回答

T相続税における債務控除
相続税の課税価格の計算上、保証債務が債務控除の対象となるか否かについて、相続税法基本通達では、次のように定めています。

 

(保証債務及び連帯債務)
14-3 保証債務及び連帯債務については、次に掲げるところにより取り扱うものとする。
(1)保証債務については、控除しないこと。ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証債務者がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償して返還を受ける見込みがない場合には、主たる債務者が弁済不能の部分の金額は、当該保証債務者の債務として控除すること。

 

今回の事例におけるM社が、相続開始の直前において債務の弁済が不能の状態にあるため、保証人である被相続人Xがその保証債務を履行しなければならないと認められ、かつ、M社に対する求償権の全部又は一部が行使不能となると認められる場合には、その行使不能と認められる部分の金額は、被相続人Xの債務として債務控除の対象となります。

 

U保証債務履行のための譲渡所得の特例

1.特例の概要
イ 所得税法64条2項の規定(保証債務履行のための譲渡所得の特例)は、次に掲げる要件を満たす譲渡所得について適用されます。
@保証債務を履行するため譲渡所得の基因となる資産を譲渡したこと
A保証債務の履行による求償権の全部又は一部が行使不能となったこと
※1 この特例は、譲渡所得のほかに、山林の伐採もしくは譲渡による山林所得もしくは雑所得又は株式の発行会社にその株式を譲渡したことによる配当所得についても、適用されます。
※2 求償権の行使不能による損失が不動産所得、事業所得又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入されるものである場合には、この特例は適用されません。

 

ロ 譲渡所得についてこの特例の適用を受けた場合には、次に掲げる金額のうち最も少ない金額に相当する金額は、保証債務を履行するため資産を譲渡した年分の譲渡所得の金額の計算上、なかったものとみなされます(所得税法64A、基本通達64-2)。
@求償権の行使不能額
A保証債務を履行するため資産を譲渡した年分の所得税の課税標準の合計額
B Aの課税標準の計算の基礎とされた譲渡所得の金額

 

ハ この特例は、確定申告書、修正申告書又は更正請求書に、この特例の適用を受ける旨を記載するとともに、「保証債務の履行のための資産の譲渡に関する計算明細書」を添付することが必要です(所法64B)。
 なお、国税通則法第23条第1項の更正の請求をすることができる期間(保証債務を履行するため資産を譲渡した年分の確定申告書の提出期限から5年を経過する日までの間)の経過後に求償権行使不能要件を満たす事実が生じた場合には、その事実が生じた日から2ヶ月以内に更正の請求をすることができます(所法152)。

 

2 相続税の債務控除との関係
イ 相続人は、被相続人の保証債務を承継しますから、相続の開始後に、
@相続人が被相続人から承継した保証債務を履行するため譲渡所得の基因となる資産を譲渡し、
Aその履行により生じた求償権の全部または一部が行使不能となった場合には、
上記の1イの@譲渡事由要件と、A求償権行使不能要件を満たすことになります。
したがって、相続人が譲渡したその資産の譲渡所得について保証債務履行のための譲渡所得の特例が適用されることになります。

 

ロ ところで、所得税基本通達64-5Bは、相続税において債務控除の対象とした保証債務と保証債務履行のための譲渡所得の特例との関係について、次のような取扱を定めています。

(保証債務に係る相続税法第13条と法第64条第2項の規定の適用関係)
64-5の3
 被相続人の保証債務を承継した相続人が、当該保証債務を履行するために資産を譲渡した場合には、当該資産の譲渡は、その保証債務を被相続人の債務として相続税法第13条の規定の適用を受けるときであっても、法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合」に該当するものとする

 

 この取扱は、相続税が所得税の代替課税であるという現行税制(相続・遺贈により取得した所得については所得税に代えて相続税を課税するという税制)からみた場合には、疑問があります。

 

求償権の行使不能による損失に相当する金額を相続税の課税価格の計算上債務控除した上、さらにその損失の金額を譲渡所得の金額の計算上控除することは、所得(相続・遺贈により取得した利益も所得税法上の所得に該当する)に対する課税上、同一の損失の金額を2重に控除するということになります。

 

ハ 債務の保証をする時において、その保証債務を履行しても求償権を行使することのできないことを知りながら債務の保証を行った事案について、次のような判例があります。

《@昭和55.10.27/名古屋地裁》
 保証人が債務保証をした際に、すでに主たる債務者が資力を喪失しており、かつ、保証人が債務者に弁済資力がないことを知りながら、あえて債務保証をしたような場合には、保証人において、あらかじめ求償権行使による回収の期待を全く持たない点において実質的にみれば、当該保証人において主たる債務者の債務を引き受けたか、あるいは、主たる債務者に対し利益供与又は贈与をなしたものとみなし得るのであって、かかる場合には、所得税法第64条2項にいう「求償権の行使が不能となったとき」に該当せず、同条同項を適用する余地はないものと解するのが相当である。

 

《A昭和56.6.26/大阪地裁》
 所得税法64条2項は、資産の譲渡代金が回収不能となった場合の所得計算の特例と同一の考慮に基づくもので、主債務者に対する求償を前提とする保証について、保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合においても、求償権の行使が不能となった場合には譲渡代金が回収不能となった場合と同様に所得計算上求償不能となった金額が所得計算上存在しないものとみなして課税上の救済を図るというものであるから、求償権の行使がそもそも不能であることを知りながらあえて保証をしたときのように最初から主債務者に対する求償を前提としていない場合には、同条項を適用することができないものといわねばならない。

 

被相続人の保証債務について相続税の課税価格の計算において相続税法基本通達14-3の適用を受けた相続人は、相続開始時において、その保証債務を履行しても、同取扱いにより相続税の課税価格の計算上債務控除の対象とした金額については求償権を行使することができないということを認識していたということができます。

 

したがって、上記の判決の示すところに従えば、相続税の課税価格の計算上、債務控除の対象とした金額に相当する部分の金額は、相続により保証債務を承継した時において、その保証債務を履行しても求償権を行使することができない金額に該当しますから、当該金額については、保証債務履行のための譲渡所得の特例の適用はないということになります。

 

3 複数の相続人による保証債務の承継
イ 被相続人から相続により承継した金銭債務のような可分債務は、相続人が複数ある場合には、学説上異論はあるようですが、判例によれば、債権者との関係においては相続分に応じて各相続人に分割されます。これによれば、本事例における相続人である父・母は、各自2分の1の割合により、被相続人Xの保証債務を承継したことになります。

 

ロ 父が母の承継すべき保証債務の割合2分の1を含め保証債務の全てを負担する旨の遺産分割は、父が母の承継した保証債務の割合2分の1を母に代わって履行し、母に対して求償しないという代償分割に該当します。
 したがって、父が土地を譲渡し、その譲渡代金から母が承継した保証債務を含め総額3,000万円を保証債務の履行として金融機関に弁済しても、そのうち父の保証債務の履行に充てられた金額は父が承継した保証債務に相当する1,500万円であり、残余の1,500万円は、父が遺産分割により負担することとなった代償債務の履行であり、保証債務の履行には該当しません。

 

ハ 父が母の保証債務を履行したことにより母が主たる債務者であるM社に対して有することとなった求償権が行使不能となっても、母はその保証債務を履行するため資産を譲渡していませんから、母については、保証債務履行のための譲渡所得の特例の適用が問題となることはありません。

 

ニ 所得税基本通達64-5Bにより、相続税の課税価格の計算上債務控除の対象とした保証債務を履行するための土地の譲渡について保証債務履行のための譲渡所得の特例が認められるとしても、本事例においては、求償権の行使不能額は1,500万円として、父の譲渡所得について同特例が適用されることになります。


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