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不動産管理会社の設立による所得分散効果
日本の資産家は、国税庁が公表している相続財産の種類別内訳によると、その所有する財産の1/2以上を不動産で占めていることから、不動産管理会社を設立して相続対策に活かす工夫が不可欠です。
この対策は、推定被相続人に集中する不動産収入の分散による毎年の所得税対策と、その収入から得られる金融資産が推定被相続人に累積することを防止することにより、長期的に大きな効果をあげることを目的としています。
所得税の節税対策と相続対策
不動産管理会社のメリット
《所得税節税メリット》 | 賃貸不動産の所有者(以下「オーナー」)から不動産管理会社に管理料を支払い、かつ、管理会社の役員をオーナーの家族にし、その役員に給与を支払うことにより、不動産管理会社を通じて、オーナーの不動産収入をオーナーの家族に、合法的に分散することにより超過累進税率の適用を低く抑えることができるため、所得税の節税に役に立ちます。 |
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《相続対策メリット》 |
相続対策としては、原則として不動産管理会社の出資は、オーナーやその配偶者が出資することを避け、子供等による株主構成とします。 |
《その他のメリット》 | 不動産管理会社の活用によるメリットは、所得分散効果だけでなく、不動産の所有者が高齢になるなどによって判断力の不安が生じた場合でも、不動産管理会社が契約行為や建物の維持管理などの手配、家賃の滞納者への督促や訴訟手続きなどを行うことができます。 |
不動産管理会社のデメリット
- 会社設立費用がかかる。
- 個人所得と法人所得とに区分して計算する必要があり、所得計算が面倒である。
- 法人の場合には赤字であっても最低限の税負担が生じる。
- 法人税の申告等にかかる税理士等への費用が必要となる。
- 社会保険への強制加入が必要となる。
したがって、不動産管理会社に移転できる所得が少額な場合には、コストが節税のメリットを上回り、節税スキームが十分に機能しない場合があります。不動産管理会社を設立するためには、ある程度の規模が必要であるといえます。
不動産管理会社の運営形態
不動産管理会社の運営形態は、大きく次の3つに区分されます。
不動産管理会社の運営形態
管理料徴収方式 |
不動産管理会社は、オーナーが不動産を第三者に賃貸する場合の仲介をし、以後の管理を行います。 |
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転貸方式 | オーナーが所有不動産を不動産管理会社に一括で賃貸し、管理会社が第三者に転貸します。 |
不動産所有方式 | 不動産管理会社自身が賃貸用不動産を取得・建築し、管理運営の業務を行っていく方式です。 |
それぞれの運営形態別における特徴
《管理料徴収方式の場合》
@貸室等の賃貸借の契約者名義はオーナーであり、不動産管理会社は不動産の管理業務を行います。
Aオーナーと不動産管理会社間において不動産管理委託契約が締結され、毎月管理業務の対価として月額管理報酬が支払われます。
《転貸方式の場合》
@不動産そのものを不動産管理会社が一括で借り受けます。
A不動産管理会社の実質的な管理報酬は賃借人からの賃貸収入とオーナーに支払う賃借料の差額になります。
Bオーナーは空室や賃貸トラブルの心配がありません。
C不動産管理会社は空室時の空家賃の支払いなどのリスクが高い分、管理料徴収方式よりも高い管理報酬を受け取ることができます。
《不動産所有方式の場合》
高収益の建物をオーナーから不動産管理会社が買取り、オーナーの毎年の所得の軽減を図り、結果として、所得税対策と相続税対策に利用することができます。
この場合、不動産管理会社へ移転しないオーナーの不動産については、管理料徴収方式及び転貸方式と併用して行うことが多いようです。
不動産管理会社設立の留意点
会社法施行後の株式会社の機関設計
会社法施行(平成18年5月1日)に伴い、有限会社は新たに設立することはできなくなりました。
中小企業の株式会社で「株式譲渡制限会社」では、以下の6つのパターンの中から自由な機関設計が選択可能です。
- 取締役会+監査役(従来の中小企業の基本パターン)
- 取締役会+会計参与
- 取締役会+監査役+会計参与
- 取締役1人のみ
- 取締役+監査役
- 取締役+会計参与
※株式譲渡制限会社とは、すべての株式の譲渡を制限している株式会社のことをいいます。
※取締役の員数は、取締役会を置かない場合は1人以上、置く場合は3人以上必要です。
※取締役、監査役、会計参与の任期は最長10年とすることができます。
また、株式会社の設立手続きが簡素化され、「類似商号」の規制がなくなり、発起設立では払込金の金融機関の保管証明は必要なく、残高証明で事足りることとなりました。
「発起設立」とは、発起人が設立時の資本をすべて引き受ける設立のことをいいます。
設立に伴い税務上留意すべき点(消費税の免税点)
株式会社等を設立する場合、資本金の額によって消費税の取り扱いに注意する必要があります。
消費税は原則として基準期間(法人はその事業年度の前々事業年度)の課税売上高が1,000万円以下の事業者は、納税義務が免除されます。
そのため、設立当初は基準期間が存在しないので、2年間は消費税の納税義務が免除されることになります。
しかし、設立当初で基準期間がない場合でも、資本金が1,000万円以上の法人は、納税義務が免除されませんので、注意が必要です。
また、平成25年1月1日以後に開始する事業年度から、当課税期間の前事業年度開始の日から6ヶ月間の課税売上高が1,000万円を超えた場合、当課税期間においては課税事業者となります(課税売上高に替えて、給与等の支払い額の合計額で判定することも可能です)ので、設立後の有利不利を事前に検討しておく必要があります。
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